給料が上がっても手取りが減る!? 「社会保険料」というステルス増税

最近、「ステルス増税が家計や会社を圧迫している」とのニュースを見て気になったので、今回は社会保険料といが“ステルス増税”と言われる原因について解説していきます。
簡単に言ってしまえば、目立たないけど、確実に増える負担だからそう呼ばれたりします。
そして、給料が上がっても手取りが減ってしまうという不思議なことが起こる一因でもあります。
これが社員のやる気や会社のコストにどう響くのか。
今回は、10年間の変化を年収500万円の例で見ていきます。
社員の手取りが減る、その裏側

「給料は上がっているのに、手取りが減ったって社員が不満そう…」
その原因は、社会保険料や税金の負担がじわじわ増えているからです。特に、社会保険料は社員の手取りを減らすだけでなく、会社側の負担も押し上げて、経営に影を落としています。
年収500万円の社員の場合を例として、2015年と2025年を比べてみましょう。10年間でどれだけ変わったか、数字で見てみます。
| 時期 | 年収 | 社会保険料(社員負担分) | 手取りの目安 |
|---|---|---|---|
| 2015年 | 500万円 | 約71万円 | 約395万円 |
| 2025年 | 500万円 | 約79万円 | 約385万円 |
※社会保険料は厚生年金と健康保険(協会けんぽ平均)の社員負担分で概算。手取り目安は、所得税・住民税も含めた簡易試算。
社会保険料の増額(社員負担分)
・2015年:厚生年金16.8%(8.4%)+健康保険10%(5%)+介護保険1.58%(0.79%)=14.19%。月41.7万円×14.19%×12=約71万円
・2025年:厚生年金18.3%(9.15%)+健康保険11.6%(5.8%)+介護保険1.8%(0.9%)=15.85%。月41.7万円×15.85%×12=約79万円
・差額:79万円 - 71万円 = 約8万円
見ての通り、10年で社会保険料が8万円増え、手取りが10万円近く減っています。厚生年金が16.8%から18.3%に、健康保険も10%前後から11.6%に上がった結果です。会社負担分も同じだけ増えているので、社員1人あたり年間8~10万円のコストアップです。それでも、社員10人なら100万円、50人なら500万円と、会社全体では大きな負担増になります。
「ステルス増税」が経営に与える影響

社会保険料は厚生労働省が決めるので、気づかないうちに上がるし、税制改正で控除(たとえば扶養控除や配偶者特別控除)が縮小されると、所得税や住民税も増えます。給料が変わらなくても、手取りが減る仕組みです。
例えば、所得税は5%〜45%の累進課税、住民税は一律10%ですが、控除が減ると課税対象の所得が増えて、税金自体がアップしますね。10年前は控除がもっと手厚かったので、同じ年収500万円でも手取りが今より多かったんです。社会保険料もじわじわ上がっています。
社員の手取りが減ると、生活が圧迫されてモチベーションが下がりがちになります。「頑張っても報われない」と感じれば、辞める人も出てくるかもしれません。中小企業だと、社員のやる気が業績に直結するから、経営者にとっても頭の痛い問題ですよね。
なぜ社会保険料が上がるの?

「でも、なんでこんなに上がるの?」と疑問に思いますよね。理由はシンプルで、日本が超高齢社会だからです。高齢者が増えると、年金や医療費を支えるお金が必要になります。その負担が、社会保険料として会社員や企業にのしかかっているんです。
厚生年金の保険料率は今は18.3%です。健康保険も11.6%に上がりました。しかも、会社と社員が半分ずつ負担するので、会社側のコストも増えています。社員の手取りが減るだけでなく、会社の人件費も抑えざるを得ない状況になっています。
ここで、「社会保険料が上がっても、それで将来の年金が増えるなら悪くないよね?」と思う方もいるかもしれません。しかし、よく考えてみる必要があります。
確かに保険料として多く払った分だけ年金は増えますが、少子高齢化の影響で、将来の年金の実質的な価値は下がる可能性が高いです。物価や賃金の伸びを考えると、払った分に見合うリターンが得られないかもしれないのが現実です。
しかも、今の手取りが減ること自体も見過ごせません。子育て中の社員なら、手取りが減ると貯金や教育費に回すお金が減ってしまいます。将来のためとはいえ、今を犠牲にするのは納得しにくいのではないでしょうか。
経営者ができることは?

社員1人あたり10年間で社会保険料が8~10万円増える現実、社員数が多いと数百万円のコストアップです。
でも、出来ることはあります。たとえば、役員報酬を調整する方法です。役員報酬を600万円から300万円に下げれば、社会保険料が年間約90万円減ります。税金が増えても、社会保険料の削減額との差し引きでプラスになればいいわけです。
具体例で見てみましょう。
| 役員報酬 | 社会保険料(会社+個人) | 節約できる金額 |
|---|---|---|
| 600万円 | 約190万円 | |
| 300万円 | 約95万円 | 約95万円 |
たとえば、役員報酬600万円だと、社会保険料は会社と個人で約190万円。300万円に下げると約95万円に減り、年間95万円節約できます。浮いたお金を会社の利益に回すと課税所得300万円増で、実効税率25~30%なら75~90万円程度の税金が増えますが、差し引き20〜万円程度は得する計算になります。社員の給料アップや設備投資に充てる資金が捻出できるかもしれません。
※税率や会社の状況で結果が変わるので、税理士に相談するのが確実です。
さらに、パートの働き方を週20時間未満に調整したり、「キャリアアップ助成金」を活用して賃上げ資金に充てたりするのも手です。助成金なら社員1人につき正社員化することで80万円(2025年)もらえるケースもあります。税理士や社労士と相談すれば、会社と社員を守る策が見つかるかもしれません。
最後に
少子高齢化が進む日本では、社会保険料の負担は今後も増えるでしょう。政府の方針が変わらない限り、控除が減ったり、保険料率が上がったりするのは避けられません。でも、社員の手取りが減る現実を知って、賢く対策すれば、社員のやる気を保ちつつ会社を守る方法は見つかるかもしれません。社会保険への加入義務も厳しくなってるので、昔みたいに「国民年金でいいや」とはいかない時代です。専門家と相談しながら、社員と一緒に乗り越えていきましょう。


